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2021年7月16日
鉄や銅など、身の回りにあるモノの材料としてのイメージが強(qiáng)い金屬。これらが私たちの身體の中において重要な役割を果たしているといっても、あまりピンとこないかもしれません。しかし、亜鉛、マンガン、コバルト、モリブデン、クロム、セレンなど、金屬なくして、私たちの健康は維持することができません。これらの金屬は身體の中にごくわずかしか存在しないものの、タンパク質(zhì)に結(jié)合するなどして多様な形態(tài)を取りながら、生命現(xiàn)象を支えるために働いているのです。
千葉大學(xué)大學(xué)院薬學(xué)研究院 小椋 康光教授は、そうした生體內(nèi)における微量金屬元素の動(dòng)態(tài)に著目し、長(zhǎng)年研究に取り組んできました。近年の分析技術(shù)の進(jìn)歩にともない、さまざまなことが明らかになりつつある一方で、まだ多くの謎が殘されているといいます。今回は、生體に必須な微量金屬元素に関する研究の最新動(dòng)向について、小椋教授にお話をいただきました。
生體內(nèi)の微量金屬元素の動(dòng)きを追う「メタロミクス」
小椋教授が取り組む研究のように、生命現(xiàn)象における微量金屬元素の機(jī)能と役割について総合的に理解しようとする學(xué)問領(lǐng)域を「メタロミクス(Metallomics)」といいます。近い研究領(lǐng)域として、遺伝子が対象となる「ゲノミクス」、タンパク質(zhì)が対象となる「プロテオミクス」があります。メタロミクスの領(lǐng)域においても、遺伝子やタンパク質(zhì)の機(jī)能をもとに生體內(nèi)微量金屬元素の動(dòng)態(tài)に迫るアプローチがありますが、小椋教授の研究は金屬自體の動(dòng)態(tài)に著目していることが特徴です。その理由について、小椋教授は次のように語(yǔ)ります。
「野球でたとえるならば、ゲノミクスではベンチのサイン、プロテオミクスではプレイヤー、メタロミクスではボールをみて試合の流れを追うことと言えます。野球に詳しい人であれば、ベンチのサインだけをみて試合內(nèi)容の理解ができるかもしれませんが、多くの人は普通、ピッチャーが投げたりバッターが打ったりするボールの動(dòng)きを追いかけますよね。それと同じように、私たちは直接金屬の動(dòng)きを追うことで、生體のなかで起きている現(xiàn)象を解明していこうとしています」(小椋教授)
2000年代初頭、メタロミクスの黎明期においては、生體內(nèi)に存在する微量の金屬元素を測(cè)定すること自體に大きな価値がありました。しかし近年では、これまで培ってきた微量金屬元素測(cè)定の技術(shù)や知見をどのように醫(yī)療や環(huán)境、食品などの分野へ応用していくかという視點(diǎn)の重要性が高まっています。一方で、検出限界以下の微量金屬元素の謎もまだまだ殘されています。小椋教授は、メタロミクスの現(xiàn)狀について、「大きく分けて、分析技術(shù)をさらに磨いて感度を高めていく方向性と、醫(yī)療や環(huán)境などへの応用を考えていく方向性の2つへ展開しています」と説明します。
千葉大學(xué)大學(xué)院薬學(xué)研究院 小椋 康光教授
2000年代初頭、メタロミクスの黎明期においては、生體內(nèi)に存在する微量の金屬元素を測(cè)定すること自體に大きな価値がありました。しかし近年では、これまで培ってきた微量金屬元素測(cè)定の技術(shù)や知見をどのように醫(yī)療や環(huán)境、食品などの分野へ応用していくかという視點(diǎn)の重要性が高まっています。一方で、検出限界以下の微量金屬元素の謎もまだまだ殘されています。小椋教授は、メタロミクスの現(xiàn)狀について、「大きく分けて、分析技術(shù)をさらに磨いて感度を高めていく方向性と、醫(yī)療や環(huán)境などへの応用を考えていく方向性の2つへ展開しています」と説明します。
生命維持に必要だが毒にもなるセレン、體內(nèi)ではどのように変化しているのか
小椋教授が取り組む研究テーマのひとつが、セレンの代謝機(jī)構(gòu)の解明です。セレンは、生體に必須の微量金屬元素として抗酸化作用や甲狀腺ホルモン代謝調(diào)節(jié)などの重要な役割を擔(dān)っており、その不足によって心筋障害などを引き起こすことが知られています。一方で、毒性の高い元素でもあり、セレン化合物のなかには毒物指定されているものもあります。したがって、生體內(nèi)ではセレンが身體にとって毒にならないように利用されるための代謝機(jī)構(gòu)があるはずですが、存在量がごくわずかであるがゆえに、その全貌はいまだ明らかになっていません。
セレンの代謝機(jī)構(gòu)を調(diào)べていくなかで小椋教授らが明らかにしたのは、細(xì)胞內(nèi)に取り込まれたセレンが、セレノシアン酸というより毒性の低いセレン化合物へと代謝されていることでした。このセレノシアン酸は、毒性の高いことで知られるシアン化物とセレンが反応したことにより生成しているものと考えられます。つまり、細(xì)胞は毒性の高いシアン化物を自ら作り出し、さらに毒性の高いセレンと反応させることで解毒していたというわけです。
シアン化物とセレンが生體內(nèi)で反応し合うイメージ
「まさに、“毒をもって毒を制する”というメカニズムです。こうした機(jī)構(gòu)が分子レベルでどのように成り立っているのか、現(xiàn)在も引き続き検討を進(jìn)めています」(小椋教授)
このようにして小椋教授は、セレンが生體內(nèi)のどこでどのような化合物として存在しているか、尿などの生體試料、培養(yǎng)細(xì)胞、植物などさまざまな対象について調(diào)べていくことで、セレンの代謝機(jī)構(gòu)の全體像の理解に挑んでいます。
これに加えて、最近、小椋先生は別の研究にも取り組んでいます。セレンを解毒するという働きとは反対に、セレンが別の毒物を解毒するという現(xiàn)象も研究対象にしています。「大型の海洋生物のなかには水銀が蓄積されることがありますが、その毒性は現(xiàn)れてきません。まだ詳しいことは分かっていませんが、狀況証拠だけを見ていくと、実は海洋生物の體內(nèi)で、セレンと水銀が反応して解毒していることは確かなようです」(小椋教授)
微量金屬元素の測(cè)定で活躍するICP-MS
実験では、セレンをはじめ各サンプル內(nèi)に含まれる微量金屬元素の定量を行います。ここで活躍しているのがICP-MSという分析裝置です。
たとえば、サンプル中にどのような化學(xué)形態(tài)のセレンが入っているのか分析する際には、高速液體クロマトグラフィー(HPLC)とICP-MSを組み合わせたLC-ICP-MSという方法で複數(shù)の化學(xué)種を分離して定量していきます。また、レーザーアブレーションICP-MSという方法を用いると、試料中のどこにどのような微量金屬元素がどれだけあるか可視化することが可能です。
セレンの分析におけるICP-MSとの出會(huì)いを、小椋教授は次のように振り返ります。
「そのとき私はフランスへ留學(xué)していたのですが、留學(xué)先で導(dǎo)入していたAgilent 7500 ICP-MSにコリジョン/リアクションセルという技術(shù)が採(cǎi)用されていたことで、當(dāng)時(shí)セレンの分析を困難にしていた原因が解消されたのです。裝置に日本語(yǔ)で注意書きがあるのを見て、日本の技術(shù)が世界に拡散していることを誇らしく思ったのを覚えています。そして、アジレントが日本でICP-MSを開発していることを知り、帰國(guó)後、大學(xué)でもAgilent 7500 ICP-MSを?qū)毪工毪长趣藳Qめました」(小椋教授)
現(xiàn)在、小椋教授の研究室では、トリプル四重極ICP-MS「Agilent 8900 トリプル四重極ICP-MS」(手前)と「Agilent 8800 トリプル四重極ICP-MS」(奧)を使用して研究
そして小椋教授は現(xiàn)在、アジレントと共同で、ICP-MSを用いて単一細(xì)胞內(nèi)の微量金屬元素濃度を測(cè)定するシングルセル解析の手法開発にも取り組んでいます。
シングルセル解析では、細(xì)胞集団の平均をみるのではなく、個(gè)々の細(xì)胞について調(diào)べていくため、細(xì)胞中の金屬存在量の個(gè)體差を明らかにすることが可能です。
小椋教授はシングルセル解析の意義について「たとえば100萬(wàn)個(gè)の細(xì)胞があるとすると、従來(lái)は100萬(wàn)個(gè)の平均値を調(diào)べるような方法が一般的でしたが、実際の個(gè)々の細(xì)胞にはそれぞれキャラクターがあります。そのなかから特異的な変化を起こしている細(xì)胞を発見するためには、やはりシングルセル解析が必要になります。とくにメタロミクスにおいては、金屬間の相互作用を調(diào)べたい場(chǎng)合などにも有効です」と説明します。
ICP-MSを用いたシングルセル解析の手法が確立されれば、微量金屬元素が関與する生命現(xiàn)象がより詳細(xì)に明らかになっていくことが期待されます。
「一原子の測(cè)定」という究極目標(biāo)に向けて
分析技術(shù)が進(jìn)歩していくにつれ、ライフサイエンス分野における金屬元素分析の注目度は高まりつつあります。小椋教授は、「究極の目標(biāo)は一原子の測(cè)定です」とメタロミクスの展望を語(yǔ)ります。
「現(xiàn)在取り組んでいるICP-MSによるシングルセル解析はあくまで通過點(diǎn)です。將來(lái)的に一原子を測(cè)定できるようになれば、いろいろな情報(bào)が得られるはずです。解析対象となる範(fàn)囲がよりミクロになっていくことで必ず次の扉が開けていくと考えています」(小椋教授)
こうした究極の目標(biāo)を達(dá)成するためには、小椋教授の専門領(lǐng)域である薬學(xué)やライフサイエンス領(lǐng)域だけでなく、裝置開発に向けて工學(xué)領(lǐng)域の研究者や分析機(jī)器メーカーなど業(yè)種?業(yè)態(tài)を超えて産學(xué)一丸となって、さまざまな分野の人たちが協(xié)働で取り組んでいく必要があるでしょう。
また、細(xì)菌學(xué)者であるルイ?パスツールの有名な言葉に、「科學(xué)に國(guó)境はない」というものがあります。國(guó)內(nèi)だけに閉じていては、科學(xué)の進(jìn)歩はありえません。研究を発展させていくためには、世界的な研究者ネットワークを構(gòu)築していくことも重要です。ここに、アジレントが大きく貢獻(xiàn)してきたと小椋教授は振り返ります。
「フランスに留學(xué)していたとき、アジレントの方が主導(dǎo)してメタロミクスの國(guó)際的な研究者のネットワークを作られていたことが印象に殘っています。分析でわからないことがあった際には、似たような取り組みをされている他の研究者を紹介していただいたり、研究會(huì)や學(xué)會(huì)が終わった後に懇親の機(jī)會(huì)を設(shè)けていただいたりなど、さまざまな形でネットワークづくりに取り組んでいました。そのネットワークが國(guó)內(nèi)に留まらず、國(guó)際的に展開していたことが大きく幸いし、私がメタロミクス業(yè)界に身を置くことができたのは、その方のおかげという部分も大きいとも言えます」(小椋教授)
アジレントはこれからも、信頼性の高い分析裝置はもちろん、研究者ネットワークのような無(wú)形的な価値も提供し続けていきます。
RA44390.5559027778
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