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2020年7月3日
四日市市は、三重県最大の人口を誇る都市です。四日市コンビナートとして発展したこの地域には、今でも多くの化學メーカーが集結(jié)しています。総合化學メーカーの東ソー株式會社の四日市事業(yè)所と、その分析?検査部門である株式會社東ソー分析センターの四日市事業(yè)部は四日市コンビナートの第3地區(qū)(四日市市霞)を代表する企業(yè)に數(shù)えられます。東ソー分析センターは、2000年4月に、東ソーの分析?検査部門が獨立する形で業(yè)務(wù)を開始し、今年で満20年を迎えました。東ソーや東ソーグループ各社をはじめ、企業(yè)、大學、公的機関などから依頼を受けて、受託分析や受託研究(共同研究)を行っているほか、東ソーおよび東ソーグループ會社の製造、品質(zhì)管理部門に関わる製品検査と工程検査、さらには環(huán)境分析を主な業(yè)務(wù)としています。受託分析では、有機材料や無機材料、表面分析やバイオ関連分析、高分子材料の分析と物性評価など、幅広い分野に対応しています。
株式會社東ソー分析センター
(寫真提供:株式會社東ソー分析センター様)
東ソー 四日市事業(yè)所では、ポリエチレン (PE)、ポリ塩化ビニル (PVC)、ポリフェニレンサルファイド (PPS) 、石油樹脂などの高分子材料を製造しているほか、四日市にある3つの研究所ではこれらの高分子材料や新規(guī)材料の研究開発が行われていることもあり、東ソー分析センターの四日市事業(yè)部では、分社化前から高分子材料の分析?解析を得意としてきました。そして、分社化後もお客様から依頼を受ける各種材料の分析や解析技術(shù)を確立し、対応できる幅を広げてきたと言います。たとえば、最近では、高分子材料分析に2D-LC (2次元液體クロマトグラフ) のテクノロジーを取り入れ、成果をあげています。同社 四日市事業(yè)部解析グループ? 香川 信之(かがわ?のぶゆき) 氏と平井 貴康 (ひらい?たかやす) 氏にお話をおうかがいしました。
株式會社東ソー分析センター四日市事業(yè)部解析グループ? 平井 貴康 (ひらい?たかやす) 氏(左)、香川 信之(かがわ?のぶゆき) 氏(右)
(寫真提供:株式會社東ソー分析センター様)
原點は東ソーの技術(shù)
高分子材料の分析において、平均分子量測定および分子量分布測定は最も重要な分析項目に挙げられます。この測定には、ゲル浸透クロマトグラフィ (GPC)/サイズ排除クロマトグラフィ (SEC) の手法が広く用いられています。東ソーは、GPC/SECの測定裝置、およびカラムのメーカーであることから、東ソー分析センターでは分社前からGPC/SEC測定を幅広く行っており、「GPC/SEC分析ではトップレベルにある」(香川氏)と、自信を持って、受託分析サービスを提供しています。たとえば、分析が難しい難溶性高分子であるセルロースやPEEK(ポリエーテルエーテルケトン)、LCP(液晶ポリマー)などについてもルーチンで対応可能となっています。増加する依頼に対応するため、2018年にはGPC/SEC測定の受託分析専門の組織である「有機高分子グループ」を発足させ、2グループ體制で分析に対応しています。
高分子材料の分析といってもその種類は様々であり、用いる溶媒も多岐にわたります。東ソー分析センターでは、一般的なTHF(テトラヒドロフラン)やクロロホルムに加えて、各種極性溶媒、フッ素系溶媒、各種水溶液などを用いた実績も豊富であり、測定溫度も、常溫域、高溫域、超高溫域に対応するなど、非常に多くの高分子材料に対応できることが強みとなっています。
分子構(gòu)造と分子量の両方で分離
広く用いられているGPC/SEC法ですが、分子構(gòu)造が異なる高分子であっても、分子サイズが同じであれば分離できないという欠點があります?!父叻肿婴扦ⅳ盲皮饨M成の違いで分離できるGPEC (Gradient Polymer Elution Chromatography) という手法と、分子量で分離するGPC/SEC法を組み合わせて分離したい。文獻に載っているようなカラーの等高線プロットが得られるようにしたい。ポリマーの組成の分子量依存性を知りたい」。2D-LCを使えば実現(xiàn)できることは、文獻で得た知識で理解していました。1次元目のカラムでGPECにより分子構(gòu)造の違いで分離を行い、得られたピークに対して、2次元目のカラムではGPC/SEC法により分子サイズで分離。そして、得られた2つのクロマトグラフを統(tǒng)合して、カラーの等高線プロットを得るという手法です。
2D-LCでのポリマー分析の結(jié)果を等高線プロットで表示。依頼分析のお客様に結(jié)果を報告する際も、直観的に理解していただけるとのこと
(寫真提供:株式會社東ソー分析センター様)
アジレント?テクノロジーでは2012年から2D-LCの販売を開始しましたが、當時はまだ利用分野が限られており、一般的な裝置ではありませんでした。香川氏も當時、実機を見たことはなく、その実力も分からなかったと言います。そこで、2012年に東ソーのHPLC(高速液體クロマトグラフ)とバルブコントローラを活用して、獨自の2D-LC 試作機を組み立て、學會発表や論文投稿に必要なデータを測定しました。しかし、試作機では測定とデータ処理にかなりの手間がかかるなど、実用的なレベルではなかったと言います。受託分析の業(yè)務(wù)に使用されることはありませんでした。
2D-LC が身近な技術(shù)に
數(shù)年後、社內(nèi)でも高分子材料の組成分離の重要性が認識されるようになった頃には、分析機器メーカーが提供する2D-LCの応用範囲も広がってきました。そこで、2017年夏に2D-LC導入の検討を始めました。選定にあたり、アジレントを含む複數(shù)の會社に、1次元目にGPEC法、2次元目にGPC/SEC法を用いた2D-LCのデモ分析を依頼しました。この依頼を引き受けたのはアジレントだけだったと言います。得られたデータも十分なものだったため、「Agilent 1290 Infinity II 2D-LCシステム」を?qū)毪贰?018年8月に稼働しました。アジレント製のHPLCを使用するのは初めてだったことに加えて、2D-LC特有の設(shè)定や決まりごとがなかなか理解できず、當初は悪戦苦闘したと言います。この時に生きたのが、かつて自作の2D-LC試作機で実験をした時の経験でした。當時分析したものと、同じサンプルを分析し、「この設(shè)定ならうまくいく」というノウハウを積み重ねてきたと言います。
ポリマーの組成分布分析には2D-LCを
ポリマーの組成分布分析では、GPECとGPC/SECを組み合わせることが有効です。1次元目のカラムで溶出した成分をためて、順次2次元目のカラムで分析していきます。マルチハートカット (MHC) 2D-LCと呼ばれる手法ですが、GPECとGPC/SECを組み合わせたポリマー分析に適した方法であり、コンプリヘンシブ2D-LC同様、等高線プロットも得られます。香川氏は「Agilent 1290 Infinity II 2D-LCシステムの切り替えバルブには10本のループを接続しており、10フラクションをサンプリングできることが最大の長所」だと感じています。一方、導入時にはどのHPLCであっても使い込んでいくうちに操作性の違いは慣れていくだろうと考えていましたが、「制御ソフトウェアがもっと軽ければ…」(香川氏)とも話しています。
高分子材料の2D-LC分析については文獻や専門書では多くの例が見られるものの、香川氏は世の中全體としてはまだまだ浸透していないと感じています。ポリマー分析を1次元のLCで行っている事例はたくさんありますが、2D-LCを用いた事例は多くはありません。一方、學會発表の場などでは関心が高く、分析ニーズも高いという印象を持っていると言います。2019年10月に開催された第24回高分子分析討論會で、香川氏らは「高分子材料における共重合體組成と分子量の関係解析」と題して、2D-LCを活用した分析について発表しました?!赴k表の最初から最後まで多くの人に囲まれて、非常に多くのディスカッションをすることができた。世の中の関心が高いことを?qū)g感した」(香川氏)。
東ソー分析センターでは、GPC分取とFTIRとNMR(核磁気共鳴)を組み合わせたオフライン解析などを用いて、高分子材料の組成分布分析を行ってきました。何が入っているか分からないサンプルの場合にはこの手法が用いられますが、分取してから分析を行うため、手間がかかります。一方、何が入っているかがある程度分かっているサンプルであれば、2D-LCで分析可能です。平井氏は、「2D-LCであれば、分子量分布と組成分布の両方を視覚化できる」と、そのメリットを語っています?,F(xiàn)在、2D-LCはフル稼働の狀態(tài)。溶媒やカラムの種類など、1次元目のGPECの分離條件検討に時間がかかると言います?!缸苑证韦郡幛畏治訾扦ⅳ欷?、ここまでのデータが出ればよいだろうと考える場合もある。しかし、お客様のサンプルを分析する場合、『お客様はこのデータで満足されるのか』ということを念頭において分析にあたっている」(香川氏)。「2D-LCで分析する場合、ある程度検討すれば、分離する條件は見つかる。しかしこれが十分な解像度を持つ條件なのかは常に意識している」(平井氏)。分析條件について十分な検討を重ね、ノウハウが蓄積されてきていることが、東ソー分析センターの2D-LCによるポリマー分析の強みとなっています。
香川氏は「ポリマー分析の場合、最終的には、分子量と組成の関係を見たいというニーズがある。お客様も等高線プロットを見ただけで直観的に理解してくださる。今後、2D-LCを活用して様々な高分子の分析実績を増やすとともに、多くの方々にこの手法のすばらしさを知ってもらいたい」と語っています。

「2D-LCを活用して様々な高分子の分析実績を増やすとともに、多くの方々にこの手法のすばらしさを知ってもらいたい」と語る香川氏
(寫真提供:株式會社東ソー分析センター様)

「見つけた分離條件が十分な解像度なのか常に意識している」と語る平井氏
(寫真提供:株式會社東ソー分析センター様)
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