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2018年2月9日
直徑5 mm以下の小さなプラスチックの欠片「マイクロプラスチック」による環(huán)境への影響が近年、世界的に懸念されるようになってきています。マイクロプラスチックは、パーソナルケア製品や歯磨き粉などに含まれている1次マイクロプラスチックと、ペットボトルやビニール袋などの比較的大きなプラスチックゴミが分解されて生じた2次マイクロプラスチックの2種類に分けられます。いずれも、プランクトンや魚の體內(nèi)、海水など、あらゆる環(huán)境中から発見されていますが、環(huán)境や生態(tài)系への影響は明らかになっておらず、世界中の研究者が詳細(xì)の解明を急いでいます。
本稿では、主に琵琶湖や大阪灣など陸水域でのマイクロプラスチック汚染の影響を調(diào)べる京都大學(xué)大學(xué)院 地球環(huán)境學(xué)堂の田中 周平準(zhǔn)教授に、マイクロプラスチック問題の現(xiàn)狀と今後の研究の展望についてお話を伺いました。
京都大學(xué)大學(xué)院 地球環(huán)境學(xué)堂 田中 周平準(zhǔn)教授
気づかれないまま進(jìn)んでいた陸水環(huán)境でのマイクロプラスチックの汚染
化粧品や歯磨き粉などに含まれるスクラブ剤として利用されているビーズ狀のマイクロプラスチック。パーソナルケア製品では100 gあたりおよそ8000個(gè)~184萬個(gè)が含まれており、これらは直接水道に流され、一部は下水処理施設(shè)や環(huán)境中へ移動(dòng)するものと考えられています。また、海や山など自然環(huán)境中に捨てられたプラスチックゴミは、熱や紫外線などの影響により、壊れて次第に細(xì)かい斷片になり、マイクロプラスチックとなります。

実際のマイクロプラスチック。さまざまな大きさや種類のものがある
田中準(zhǔn)教授は2015年に、これらのマイクロプラスチックが環(huán)境へどのような影響を與えるかを明らかにすべく、研究をスタートさせました。これまでの研究で、大阪灣や琵琶湖などから20種類を超えるマイクロプラスチックを発見しています。
海洋ゴミである比較的大きなプラスチックゴミや、環(huán)境水に含まれる有害化學(xué)物質(zhì)に関する研究はこれまでにも広く行われてきましたが、田中準(zhǔn)教授は「マイクロプラスチック程度の大きさの物質(zhì)は見過ごしていたことが多く、これまであまり測定されてきませんでした」と話します。しかし、マイクロプラスチックの研究はここ數(shù)年で世界的に注目を集めるようになりました。
大きなプラスチックゴミにおいては、魚が飲み込むことで摂食器官や內(nèi)臓が傷付いて死に至っているというケースなどがよく知られていますが、マイクロプラスチックに関しては、生物に取り込まれた際にどのような影響があるのか、その詳細(xì)はいまだ明らかになっていません。しかし、東京灣や大阪灣、琵琶湖などで調(diào)査された魚のうち、約4割がマイクロプラスチックを體內(nèi)(消化管)に取り込んでいたことは事実として報(bào)告されています。

マイクロプラスチックを顕微鏡で観察している様子。畫面に寫っている丸いビーズ狀の物質(zhì)がスクラブ剤に含まれているマイクロプラスチック
マイクロプラスチックは殘留性有機(jī)汚染物質(zhì)を吸著する
マイクロプラスチックは疎水性であり、疎水性の化學(xué)物質(zhì)を吸著する性質(zhì)があります。したがって、毒性の高い殘留性有機(jī)汚染物質(zhì)(POPs)を吸著したマイクロプラスチックが環(huán)境中に広がっている可能性も考えられます。田中準(zhǔn)教授は、「たとえば、ウォータープルーフの化粧品などに多く含まれる有機(jī)フッ素化合物の一部は、環(huán)境中で毒性のある物質(zhì)に変わることがこれまでの研究から明らかになっています。これをマイクロプラスチック入りのクレンジング剤で落として水道に流すということに対する規(guī)制は現(xiàn)在特になされていませんが、毒性の高い化學(xué)物質(zhì)となりマイクロプラスチックに吸著されて運(yùn)ばれている可能性もあります」と説明します。田中準(zhǔn)教授の研究グループでは、マイクロプラスチックだけでなく、それに吸著される化學(xué)物質(zhì)についても研究が進(jìn)められています。
田中準(zhǔn)教授の研究室では、マイクロプラスチックに吸著するような有機(jī)フッ素化合物などの化學(xué)物質(zhì)についても研究を行っている。寫真はガスクロマトグラフ質(zhì)量分析計(jì)で分析を行っている様子
田中準(zhǔn)教授らは、琵琶湖や大阪灣のほか、ベトナムやネパールなど海外へも直接出向いて現(xiàn)地のマイクロプラスチックのサンプルを採集しています?,F(xiàn)場では、船に乗って網(wǎng)を引き、數(shù)十トンの水をろ過してサンプルを採集していきますが、従來、この方法で採集されるマイクロプラスチックの大きさは、網(wǎng)目の大きさの都合から300 μm程度までであったといいます。しかし、田中準(zhǔn)教授らの研究グループでは、採取方法などを工夫することにより、現(xiàn)在100 μmまでの大きさのサンプルを採取できるようになっています。
マイクロプラスチックの採取方法。船に乗って網(wǎng)を引き、數(shù)十トンの水からサンプルを採集していく
研究室に持ち帰ったサンプルは、顕微鏡で観察して個(gè)數(shù)やサイズを測定し、FTIR(フーリエ変換赤外分光光度計(jì))を使ってその成分を同定します?,F(xiàn)在はアジレント?テクノロジーが提供するAgilent Cary 630 FTIRと、Agilent 660/610FTIR顕微システムの2臺(tái)のFTIRでマイクロプラスチックを測定。100 μmより大きいサイズのサンプルには前者、100 μmより細(xì)かいサンプルには後者を用いています。
田中準(zhǔn)教授は、より小さいサイズのマイクロプラスチックをいかに効率的に測定するか、ということが今後の課題だと語ります?!?60/610FTIR顕微システムでは、理論上5 μmサイズのマイクロプラスチックまで測定することができます。粒子が小さくなればなるほど、環(huán)境中に含まれるマイクロプラスチックの表面積は大きくなるので、そのぶん吸著される化學(xué)物質(zhì)も増えます。したがって、どんな大きさのプラスチックが環(huán)境中にどれくらいあるのかということを調(diào)べることは、今後、環(huán)境中のマイクロプラスチックの影響を議論するうえで非常に重要です」(田中準(zhǔn)教授)
ただし、マイクロプラスチックが小さくなればなるほど、人の手による細(xì)かい作業(yè)が発生するため、その測定は困難になります。田中準(zhǔn)教授らは、より小さいマイクロプラスチックをスムーズに測定できるような測定法の開発にも取り組んでいるところです。

Agilent 660/610 FTIR顕微システム。100 μmより小さなマイクロプラスチックの測定に利用する
一方で、100 μmより大きなマイクロプラスチックを測定する630 FTIRは、持ち運(yùn)びが可能なほどコンパクトなことが特長です。昨年は、學(xué)會(huì)の市民セミナーでも利用されました。
「マイクロプラスチックの研究をクラブ活動(dòng)で行っているという広島県の高校生に、実際にプラスチックを持ってきてもらって、セミナーの場でFTIRの測定を體験してもらいましたが、大変好評(píng)でした。これはコンパクトな630 FTIRならではの反響だと思います。操作が容易で、測定時(shí)間も短いので、高校生でも教えてもらえばすぐに自分で測定できるようになるんです。今後は、全國でこのような活動(dòng)をされている方々のネットワークを作っていくことで、さらに研究が加速していくと考えています」(田中準(zhǔn)教授)
Agilent Cary 630 FTIR。持ち運(yùn)びが可能なコンパクトな大きさが特長。100μmより大きなマイクロプラスチックはこちらで測定する
環(huán)境や生物にできるだけやさしくできるような世界を
このように、マイクロプラスチックについて、さまざまな視點(diǎn)から研究を進(jìn)めている田中準(zhǔn)教授。一度研究テーマを決めたら、最低10年間は続けることを心に決めているそうです。
「そういった意味では、製品を購入した後、実際に使用していくうえでもきめ細(xì)やかなサポートをいただけるアジレント?テクノロジーとは、非常に相性が良いと感じています。これからも、丈夫でメンテナンスのしやすい、長く使える製品を提供し続けていただけたらと思っています?!?田中準(zhǔn)教授)
環(huán)境問題に取り組んでいくためは、研究者だけでなく、一般市民の意識(shí)も高めていかなければなりません。田中準(zhǔn)教授は、今後の研究の展望について「流域に住んでいる人たちの環(huán)境への何気ない意識(shí)が、そこに暮らす生物への影響を低減させます。私たちが便利さを享受する一方で、知らないあいだに生態(tài)系を支えているさまざまなものに対して影響を與えてしまっているという事実を知ることで、環(huán)境や生物にもできるだけやさしくできるような世界のあり方を示していきたいですね」と語ります。
まだまだ未解明の部分が多いマイクロプラスチック。世界中の研究者がその詳細(xì)の解明に向けて競っています。田中準(zhǔn)教授は最後に「環(huán)境問題では、やらなければならないことがたくさんありますが、まずはできることからコツコツと研究を進(jìn)めていきたいですね」と話してくれました。
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