鈴木準(zhǔn)教授は、研究テーマのひとつとしてLEDを光源とする分析裝置に注目してきました。LEDは従來のタングステンランプや放電燈と比較して、小型で低消費(fèi)電力、そして長壽命であることから、分析裝置の光源としても有用です。これまでの研究では、赤?緑?青の3色のLEDが一體となったRGB LEDを用いた比色計(jì)や、紫外線LEDを光源とする蛍光光度計(jì)など、LEDを光源とすることで手のひらサイズの軽量な測定裝置を開発しています。こうした小型、軽量な分析裝置のしくみについて、鈴木準(zhǔn)教授は蛍光光度計(jì)を例にあげて説明します。

「この蛍光光度計(jì)ではセレンの測定が可能です。セレンは、ジアミノナフタレンという試薬と反応させることによって、錯(cuò)體を形成し370 nmの紫外線を照射することで蛍光を発します。この溶液をセルに移し、その強(qiáng)度を測定することで、セレンの定量を行うのです。また、この裝置では発光波長の異なるLEDを用いることで、ホウ素の測定も可能です。ホウ素を定量する場合は、『流れ分析』と呼ばれる、フローセル(チューブが付隨する、連続的な測定が可能なセル)に試料を入れる手法を使います。ここに310 nmの紫外線を照射すると、その一部がホウ素に吸収されて360 nmの紫外線が出るため、それを検出するというわけです。」(鈴木準(zhǔn)教授)

鈴木準(zhǔn)教授の研究では、こうしたセレンやホウ素のほか、六価クロムや亜硝酸態(tài)窒素、リンなど、環(huán)境中のあらゆる物質(zhì)の検出を、簡易分析の対象としています。そのねらいは、環(huán)境分析を、研究用途だけでなくさまざまな分野へ拡大することにあります。

「研究用途で分析する場合は、高い分析の精度と正確さが必要です。また、水道水の分析などでは、公定法と呼ばれる手順に則った分析が必要です。しかし私の研究で目指すのは、『測ることの深化』ではなく、『測る用途の拡大』です。法律に則った、あるいは厳密な分析が必要かどうかを見極めるための分析をスクリーニングといいますが、このような分析においては、測定の精度や正確さは用途に応じた要件をクリアできれば良いので、小型?軽量化とのバランスをみて、裝置を開発しています。私の研究では、何らかの試料を測りたいという依頼をまず受け、その試料に対して手持ちの裝置や手法が使えるかを検討、あるいは新たな裝置を開発し、検出精度を依頼元と協(xié)議する形で進(jìn)めていくことが多いです」と話す鈴木準(zhǔn)教授。セメントやメッキ浴などの工業(yè)分析、ワインや食用油などの食品分析など、多岐の分野から鈴木準(zhǔn)教授への開発依頼が寄せられていると言います。

分析裝置の開発においては、そこでの検出結(jié)果を評価する工程が存在します。當(dāng)然ながら、評価時(shí)には正確な値を知っておくことが必須となります。

鈴木準(zhǔn)教授が所屬する環(huán)境科學(xué)科の學(xué)生実験室には、アジレント?テクノロジーの4100 MP-AES (マイクロ波プラズマ発光分光分析裝置。以下、MP-AES)が設(shè)置されており、さまざまな研究分野の微量元素分析でこれが使用されています。ユーザーの一人である鈴木準(zhǔn)教授は、「裝置を開発したとして、作りっぱなしでは性能が保証できません。MP-AESの結(jié)果と突き合わせて、値が妥當(dāng)なものであるかどうかを確認(rèn)しています」(鈴木準(zhǔn)教授)と語ります。

MP-AESは原子の発光スペクトルを検出する選択性の高い分析裝置のため、検出対象以外の元素が存在していても、その影響をあまり受けずに目的となる物質(zhì)の濃度を知ることが可能です。こうしたMP-AESの特性は、分析裝置の開発において有効に機(jī)能すると、鈴木準(zhǔn)教授は語ります。

「私が開発している吸光光度計(jì)や分光光度計(jì)、蛍光光度計(jì)などは、検出対象の物質(zhì)と一緒に存在している物質(zhì)の影響を強(qiáng)く受けます。そのため、思うような性能が出ない場合には、試料中に何が共存しているかという情報(bào)をもとにトラブルシューティングを進(jìn)めることが非常に重要となるのです。ME-AESは多元素が混合する試料に含まれる1つ1つの元素を比較的高い感度で測定できるので、研究を進(jìn)める上で非常に助かっています?！?鈴木準(zhǔn)教授)

MSISを使用することで、As、Se、Hgなどの元素も、高い感度で測定することが可能

こうした多元素の測定や、特定の物質(zhì)を検出すべく、鈴木準(zhǔn)教授が利用するMP-AESでは、オプション機(jī)能であるマルチモードサンプル導(dǎo)入システム(MSIS)も導(dǎo)入済みです。

「セレンを測定する小型蛍光光度計(jì)の開発や、ヒ素の定量分析に利用しています。MSISでは水素化物発生法が利用できるため、これらの物質(zhì)を高い感度で測定できるのです。私の研究だけでなく、生物系の教員からもヒ素を測定したいという要望が來ています?！?鈴木準(zhǔn)教授)

鈴木準(zhǔn)教授が觸れたとおり、MP-AESは分析裝置の開発時(shí)だけでなく、他の研究室や學(xué)生実験などでも多く利用されています。

環(huán)境科學(xué)科を卒業(yè)した學(xué)生の中には、環(huán)境コンサルタントや受託分析の仕事に就く人もいます。そのため同學(xué)科の授業(yè)では、公定法に則ったCOD(化學(xué)的酸素要求量)の測定や実務(wù)に則した農(nóng)薬の分析、河川水の重金屬分析といった実習(xí)が行われ、MP-AESを活用しています。

日々利用される裝置だからこそ、メンテナンスやランニングコストが削減できるというMP-AESのメリットは、大きな価値を持っていると、鈴木準(zhǔn)教授は語ります。

「元素分析にICP発光分析裝置を利用する場合、1日の利用でアルゴンガスのボンベが1本空になってしまいます。日々の使用でこれを使う場合、學(xué)生実験の予算內(nèi)ではとても対応できません。一方、窒素ガスジェネレーターを?qū)毪筏縈P-AESは空気から生成した窒素をプラズマガスとして利用するため、ガスの費(fèi)用は発生しません。消耗品もトーチとチューブのみですので、メンテナンスに要するコスト負(fù)荷は大きく抑えられています?！?鈴木準(zhǔn)教授)

ICP発光分析裝置は、市場に多くの製品が存在します。ですがMP-AESは、2017年現(xiàn)在、アジレント?テクノロジーだけが提供する製品ジャンルとなります。比較対象がないことから、導(dǎo)入において、性能など不安視される點(diǎn)はなかったのでしょうか。

この疑問に対して鈴木準(zhǔn)教授は、「ICP発光に比べて感度が落ちるという話は伺っていましたが、アジレント?テクノロジーの技術(shù)には大きな信頼を寄せていたため、それほど不安はありませんでした。実際に利用してみればわかりますが、普段の研究や講義での用途では、ほぼMP-AESだけで元素分析を行えています。元素によってプラズマの特性が違うので向き不向きはありますが、汎用的な金屬元素に関して言えば、MP-AESでほぼ事足りている狀況です」と、高い満足度を示してくれました。

鈴木準(zhǔn)教授の研究が成果をあげるにつれ、「分析用途の拡大」に向けた、裝置やシステム側(cè)の対応は進(jìn)んでいくことでしょう。その次の段階に存在するのが、「利用者の教育」です。この點(diǎn)について鈴木準(zhǔn)教授は、ビジョンも交え次のように話してくれました。

「今後、試料を注射器で入れるだけで正確な値が測定可能な分析システムを開発していくことで、環(huán)境分析のハードルを一層引き下げていきたいと考えています。一方で、分析が簡単になると今度は、それによって示される數(shù)字がどういう意味を持つかという知識教育が重要度を増すことになるでしょう。私たち分析屋が一般的だと思っていることが、世間の常識ではないということは往々にしてあるのです。測定の作業(yè)自體は誰もができるような簡単なものになっても、測定後の評価が素人であっては意味を成しません。分析用途の拡大を目指すべく、利用者の教育も今後注力していきたいと考えています」(鈴木準(zhǔn)教授)。

鈴木準(zhǔn)教授が進(jìn)める簡易分析の裝置や手法が確立していくにつれて、日々の生活のあらゆる場面に環(huán)境分析が取り入れられることとなります。これは、自然環(huán)境と共存した我々の暮らしを一層豊かなものにしてくれるに違いありません。